経済・政治・国際

2009年7月23日 (木曜日)

マネー資本主義 第4回を見て

 リクエストにお応えして、NHKの「マネー資本主義 第4回 ウォール街の“モンスター" 金融工学はなぜ暴走したのか」の再放送を録画して見ました。非常に説明するのが難しい分野だけに、概ねわかりやすい説明はできていたと思います。ただ説明に時間を取られすぎて、ベアやリーマンの破綻や、AIGの国有化の要因説明がきちんとできていなかったのはどうなんだろうか・・・というより、そこまでの説明を50分間に収めるのは不可能なんで入れなきゃ良かったのにという気はしましたけど。

 ベアやリーマンの破綻は、このような証券化商品の損失で儲からなくなり格下げなどで信用力が低下したために、資金調達ができなくなったのが大きな要因です。預金を有する銀行と違い投資銀行は前回説明したレポなどのマーケットでの資金調達に多くを依存していますが、信用力が落ちたらもう自力で資金は取れません。他の主要銀行などは各国の政府が支援して助けてあげたんですが、この2つは助けてもらえなかったということ。

 以前にここでご説明した「サブプライム問題」の根源の部分は、まさにこの金融工学によって生み出されたものですが、CDSの存在自体がいかんとはワタシは思っていません。あまりにリスクを軽く見すぎていたというか、良くワカッテナイ人が関わりすぎていたというのか・・・。そういえば、07年の終わり頃には、番組でビーカーの上の綺麗な水の部分(スーパーシニアなんて言います)を持っている「だけ」なので、損が出ることはない!と強弁されていた、ケッタイな金融機関のお偉いさんもいらっしゃいました。

 そうそうAIGがCDSの受け手というなら、「モノライン」と呼ばれる保証専業会社のことにも触れて欲しかったですね。どちらも「AAA」という最上格の格付けを持っていて、AIGはCDSの売り手(リスクの引き受け手)に、モノラインはCDOの保証を行っていたのですから。いずれも、CDO等の証券化商品の中で、番組でやっていた浄化された上澄の「AAA」の部分を保証していました。だからほぼノーリスクで保証料だけ稼げると思っていたら・・・というワケ。それも実際に保証した商品の多くがデフォルトして元利金の支払いを肩代わりしてあげたワケではなくて、将来的な損失リスクが大きいという理由で「格下げ」されていったのがモノラインやAIGがタイヘンなことになった主因だから困ったものです。

 それと評価損とか減損とかの「時価会計」問題にも言及して欲しかったですね。別に売買していなくても、売買目的で保有している商品(有価証券)は、基本的にフェア・バリューという「公正価値」というもので、毎四半期末に値洗いして、時価が下がっているだけで、P/Lにヒットする(損が立って収入の部分にマイナスの効果を及ぼし、一定以上になると強制的に減損処理しないといけない)ことで、こういう証券化商品を持っていた投資家や金融機関は苦しめられてきたワケですから。

 「市場は生き物」だと言われていますが、それは生身の人間が関わっていることなので、確率論でリスクが管理できるほど甘くはないということ・・・つまり人間って理屈どおりには動かないことが多々ある訳でして。長年マーケットなんていうものに関わっていて、何度もえ~!なんてことはありましたけど、今回のような「ノーマーケット」なんて事態がこんなに長く続いたのは初めての経験です。そんな中、懲りずにまたリスクを分散するスキームを考えているんだとか。それも今度は自然を相手に数学で立ち向かうらしく・・・そりゃ無理があるでしょって直感的に思いますけど。前にも言いましたけど、結局この手の方々は以前の状態に戻れるとホンキで思ってらっしゃるようで・・・とっくにパラダイム・シフトが起こっているんですけどねぇ。

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2009年6月14日 (日曜日)

マネー資本主義

 という番組をNHKでやってました。今日で三回目。でもねぇ~結構な事実誤認があるんですよ、これが。ということで、たまにはカタイ話もやらないと、おちゃらけてるだけの人だと思われてもいけないので(笑)。アドバイザー的な人が番組にはいるんでしょうが、世界中がもう2年くらいタイヘンな思いをしている根源の問題をきっちり把握されてない「専門外の専門家」がまだいらっしゃるとは驚きです。

 もう皆さんにもお馴染みの「サブプライム問題」というのは、要するに住宅ローンなんか借りちゃあいけない人に、最初金利払わなくていいですからとか、住宅価格が上がれば乗り換えればOKですからとか言って、無理やり借りさせたのが原因です。でも銀行がそんなことやってたら、焦げ付いたらど~すんだよ~ということになるんですが、「証券化」という手法を使って、沢山の人のローンをまとめて証券化して、更に分解して再証券化商品なんていうものを作ったのでした。最初に焦げ付くとやられる部分(エクイティといいます)、次にくる部分(メザニン)、そして余程の焦げ付きが出ないと計算上は被害に遭うはずもない部分(シニア、その中でも更にいいのがスーパー・シニア)に切り分けて世界中にばら撒いていたので、銀行やノンバンクはローンをかき集めて投資銀行に売っちゃえばあとは知ったこっちゃないで済んだ・・・ワケです。

 それで、07年には住宅価格が下落に転じ(06年終わりごろかも)、4月にサブプライム専業大手が破綻し、俄然サブプライムが話題となり、当然番組でやっていた社内でヤバイ部分を沢山持たされていたベアのヘッジファンドも破綻し、いよいよヤバイということになってゆきます。ただその後、番組でやっていたBNPパリバの部分はちょっと違うんですよね(同じ様に破綻と言っていましたけど)。これは「パリバ・ショック」と呼ばれ、株価が急落したりした大事件だったんですが、別に破綻したからではありません(パリバさんに怒られますよ)。ミューチュアル・ファンドというまあ法人向けの投信のようなものにサブプライム関連の証券化商品を組み込んでいたのですが、解約しようにも、「いや出来ません、ちょっと待ってください」と言ってしまったので大騒ぎとなったのです。その理由は、証券化商品の「値段が判らない」、つまり時価がいくらか見当がつかないためで、ちょっと待ってということになったのです。

 なぜショックだったか。それは、証券化商品たって別にシニアの「AAA」の部分持ってるだけなら大丈夫でしょとタカをくくっていた人たちに、「え?値段がわからないの?どういうこと?」と極度の不安を与えてしまったからです(あとは米国だけじゃなく欧州でも同じことがという驚きもありましたけど)。ということは、そういう商品を沢山持っている人はそれを売ろうにも売れない、つまり手元のカネに困る状況に陥る「流動性の危機」に陥るワケです。余裕資金で損してる人は別に困ったなあで済むワケですが、お金を借りて買っている人はタイヘンなことになるワケです。そう、手元資金の何倍ものお金を借り入れて投資をする、これを「レバレッジ」というんですが、ヘッジファンドもこういうことをやっていて、投資家から預けたカネ返せ!と言われても、持っているのは売るに売れない、そう値段がどこにあるか判らない商品だらけなんですから、バナナの叩き売り状態になっちゃうワケで・・・。更には借り手いたカネというのは、レポ取引という国債とかRMBSとかの債券を質草にして短期的に借りていたんですが、これはある種の相対取引による信用貸しなんで、質草が幾ら良くても信用されない相手と見られれば、もう応じてもらえません。

 ついでに、昨年のリーマン・ショックの影響は、これが証券化商品のみならず、株とか国債とかの流動性のある投資商品以外のほとんどの商品のマーケットがなくなってしまったからタイヘンだったワケです。ここにきてようやく、そこそこの商品には、それなりに価格がつくようになりましたが・・・。一応その筋のプロとして言わせていただければ、彼の国の方々はサブプライム以前の状況に戻るという幻想を抱いてるように見えて仕方がなくて・・・成功体験というんでしょうかねぇ。もうあんなアホみたいにカネ儲けが出来る商売なんて成り立たないという現実から再スタートする、つまり世の中は変わっちゃったんだよということを理解してから前へ進まないと、ヘタするとおクニがやばいんじゃないかと心配をしている今日この頃。

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