« 井上陽水奥田民生 in Zepp Tokyo | トップページ | 鈴木ヒロミツさん逝く »

2007年3月 4日 (日曜日)

井上陽水奥田民生『ダブルドライブ』

Dd
 97年に名前を繋げただけのユニット名「井上陽水奥田民生」で「デビュー」して早10年。「頃合が良い」という陽水氏の言葉通り、『ダブルドライブ』は前作の『ショッピング』よりも、二人の感性が上手く混ざり合って、力が程よく抜けた「力作」になっている。
 
 「が」とその後のふっと力を抜いた陽水氏のボーカルが、「アウトバーンの狼」も「国境を越えて県境で昼寝」かよ・・・といった「呆れた」感じを上手く表現している『アウトバーンの狼』は、1曲目を飾るに相応しいストレートな力強いロック・ナンバーだ。クレジットを見ると、松雪泰子さんがコーラスに参加されていてドラムスの沼澤氏もヤルナ(笑)。シングルで先行発売された『パラレル・ラブ』は、主旋とバックを揺れながら進行する二人の絶妙なボーカル・ワークが光る。

 そしてお互いの地元を歌った2曲。『HIROSHIMA』は、陽水氏がYahoo地図を眺めながら目に留まった地名などを織り込みながら詞を作ったという。広島という土地柄からか、色んな場面が目に浮かんでくるようななんとも懐かしくも切なくも哀しくもある詞に、民生氏のゆったりとしたメロディーとボーカルがぴったりとハマッタ名品。「いつくしむのが」で始まる詞に、あの安芸の宮島の厳島(いつくしま)神社を忍ばせたと思うのは勘ぐり過ぎだろうか。一方陽水氏の地元福岡を歌った「海の中道」は、陽水氏のメロディーと、本当はウクレレで呼ばれたという、つじあやのさんのコーラスが都会の中のオアシス的なこの場所の風を運んでくれる。

 イタリアの曲なのになぜかボサノバのリズムに揺れる『パスタ・セレナーデ』。「辱めてゆく」というワンフレーズが絶妙なスパイスとなり、ちょっとかったるく突き放したような民生氏のボーカルが心地よい。一転激しいナンバー『京都に電話して』は、陽水ワールド炸裂の詞のセンスに恐れ入るばかり。「飲めんばい」やら「遊びんさい」と福岡や広島の方言を交えながら、「帯のモードに見とれたい」「寺のシェイプに見とれたい」と、まるで外人が見たかのような「Kyoto」のエギゾティックな雰囲気を醸し出す陽水氏のメタリックなボーカルが秀逸。

 ポップな曲調に、聴きようによっては怪しげな詞が、何事もなかったかのように紡ぎ出される『恋はハーモニー』。なんともお気楽「そうに」歌う二人のボーカルに、ランブリングでもラブリーもない「Love real」と歌う狡猾なオトナの世界観を忍ばせた・・・というのは考えすぎか。「金属のメタル」のようなタイトルの『砂漠のデザート』は、「月の沙漠」のような異国の雰囲気のアレンジに、砂・・・水・・・と意味深に「ためて」歌う陽水氏のボーカルが摩訶不思議な世界を描き出す。「水」が「砂漠」を旅する人のデザートなのか・・・宇宙の彼方に謎だけが飛んでいくようだ。

 その謎の余韻も覚めやらぬうちに新たな謎を提示する『羽飾りMOKKO』。アコギの音色にリズムが被さって韻を踏んでいくだけで、なんとも言えない寂しげな空気感を創り出してゆくチューン。そんな謎を「神」の世界まで昇華させてゆくかのような『にじむ虹』。なぜか「Let It Be」を連想してしまう作りこまれた素晴らしいメロディーラインと、類稀なる二人のボーカルの存在感を際立たせるかのようなバックコーラス。このアルバムの中でひと際存在感があるナンバーだ。その「神」つながりで『神の技』。ワールドカップ観戦に出かけた民生氏の詞だと聞くが、メロディーも詞の世界も陽水氏が随分と手を出したことが伺える「らしい」作品。

 そして「神の声」で作れと指示があったという(笑)季節モノの2曲で〆る。なぜバニラシェイクかは聞くまい。そこには必然しかないのだろうから・・・陽水氏の甘いボーカル・ワークが光る『クリスマス・バニラシェイク』は、最後に民生氏流の遊び心でこれでもかと「バニラシェイク」の言葉が畳み込まれてゆく。まあ色んなことがありましたが・・・最後はほっこり『南国の雪』で。

 このアルバム用の曲作りは、お互いがソロで作るのより遥かに早くできたのという。レコーディングも然り。それなのに何故こんなに印象に残る素晴らしい出来栄えなのだろうかと考えていたら、「夢の中へ」の歌詞が浮かんできた。「這いつくばって」探しても、つまり必死になって自分の価値観の中だけで「いい」ものを探しても、それが必ずしも人には届かないし「見つからない」のだと・・・。陽水氏と民生氏という実力を十二分に持った稀有のアーチスト二人が、それぞれの力を信じて委ねて、「踊りませんか」とばかりに「まあいいっか」で楽しく作ったと聞くこのアルバム。ZEPP TOKYOのWアンコールで二人が歌った曲が、陽水氏の73年のヒット・ナンバーだったその『夢の中へ』だったことに不思議な力を感じた。

|

« 井上陽水奥田民生 in Zepp Tokyo | トップページ | 鈴木ヒロミツさん逝く »

井上陽水」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/54025/14133329

この記事へのトラックバック一覧です: 井上陽水奥田民生『ダブルドライブ』:

» 福岡で働こう! [福岡あるある情報銀行]
福岡で働こう!Uターンに悩んでいる方。都会でのライフスタイルに徹底した哲学がある方ならいいんですが、そうでないなら、やっぱり地元の福岡がいいですよ。あなたの生まれ育った福岡は、他県の方をも魅了して、福岡に住みついてしまう福岡でもあるのです。... [続きを読む]

受信: 2007年3月 7日 (水曜日) 06:52

« 井上陽水奥田民生 in Zepp Tokyo | トップページ | 鈴木ヒロミツさん逝く »